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ダイビング中に呼吸は止めていいのか?
ダイビングの大原則「ダイビング中は呼吸を止めてはいけません。」
という言葉、ダイバーなら誰もが頭にあるはず。
しかし、実際のダイビングシーンでは呼吸を止めてしまっているシチュエーションもあるのではないでしょうか?
今回はそんなダイビング中の呼吸についての話です。
呼吸を止めたいシチュエーションとは
大原則に「呼吸を止めない」とあるように、本来はエントリーからエキジットまで呼吸を止めなくてもダイビングをすることができます。
それなら何故ダイバーは呼吸を止めようとするのでしょうか?
呼吸を止めたいシチュエーション。
つまり呼吸を止めた方が効率がよかったり、その方が楽しい状況です。
ここでは必要な状況とは書きません、必要な状況があるなら大原則が崩れてしまいます。
例えばですが、
- 魚に近づきたい
- カメラで写真を撮りたいを取りたい
- 浮力のコントロールのため
といった感じでしょうか。
特にハゼ系の魚は臆病で、吐いた泡の音でも巣の中に引っ込んでしまうことが多く、呼吸をしたままだと中々近づけないことも。
写真を撮るにしても、息を吸ってプラス浮力になると体や腕が安定しません。
集合写真を撮るときも泡で顔が隠れないように少し息を止めたりする人もいるのでは無いかと。
息を吸ったまま、息を吐いたまま呼吸を止めると極端に+-の浮力になります。
そのため静かにほんの少しだけ深度を変える場合には効率は良いです。(体には全く良くないですが)
呼吸を止めてはいけない理由
理由としてはエア・エンボリズム(肺の過膨張障害)の防止が大きいです。
深度が浅くなるにつれ空気は膨張します。普通に呼吸をしている分には膨張した分の空気は吐き出されるのですが・・・。
呼吸を止めてしまうと肺の中の空気の逃げ場がなくなり、肺を破裂させてしまうことになります。
大原則「ダイビング中は呼吸を止めてはいけません。」はこのエア・エンボリズムを起こさないための習慣付けの面が大きいと思います。
この習慣で浮力のコントロールが苦手なダイバーや、パニックになったダイバーが無意識に呼吸を止めるのを防止します。
呼吸を止める=事故の可能性が上がる
そのためインストラクターやガイドの方は口を大にして「呼吸を止めていいときもあるよ!」とは言いません。
実際にこの手の質問をされたときに「止めていい時もあるんだけどねぇ・・・。」と濁された方もいるのでは?
また長時間の息ごらえや呼吸を止めたままの過度な運動は酸欠(または二酸化炭素過剰「ハイパーカプニア」)を起こします。
この状態になると頭痛や意識障害、過呼吸などが起きトラブルを誘発します。
二酸化炭素はナルコーシス(ガス酔い)に深く関わります。
そのため高深度下では少しの二酸化炭素過剰もリスクを高める原因になりますので、しっかりとした呼吸が大事になってきます。
本題・呼吸は止めていいのか?
結論を先に言うと「よく考えて止めるならOK」※「無し寄りの有り」です。
前述で「呼吸を止めたまま浮上する」危険性と「酸欠」になる危険性に触れました。
つまり深度変化が生じない場合、過度な運動がない場合はリスクが少ないということです。
深度変化がなくゆっくりと魚に近づく場合、体を固定して写真を撮る場合などの限定的な状況で意識的にであればOKでしょう。
但し浮上のコントロールの際に呼吸を止めるのはスキップ呼吸になりますので注意。
吸い気味の呼吸、吐き気味の呼吸を使用してコントロールしましょう。
※呼吸方法については別途投稿予定です。
リスクが少ないというのもポイントです。
人は「無意識」をコントロールすることはできません。
無意識とはトラブル発生時などの限定的な時以外にもやっています。
文字を読んでいるときに呼吸が止まっている人もたまにいますし、感動的な光景を目の当たりにしたとき人は息をのみます。
それこそ写真を撮った後や浮上時に「呼吸を忘れる」という状況も起こり得ます。
またダイビング後半にも注意です。
深度が浅くなってきた場合や安全停止中に体内の窒素が排出される組織があります。
呼吸を止めることで体内の空気の循環が弱くなり、窒素排出の面で不利になるのです。
残留窒素が多いままエキジットしてしまうと減圧症のリスクを高めてしまいます。
深度が変わらないから、動かないからといってリスクが全くないわけではない!
そのことは頭に入れて置いてください、呼吸を止めないに超したことはありません。
まとめ
- 大原則「ダイビング中は呼吸を止めてはいけません。」は間違っていない。
- エアエンボリズムを含む減圧症等の防止
- 酸欠・二酸化炭素過剰の防止
- 呼吸を止めないことへの習慣付け
- リスクが少ない場合はよく考えてならOK
- 深度が変わらない場合
- 体を固定している場合
- 過度な運動が無い場合
- リスクがないわけではない
- 減圧症等の恐れがある(窒素排出の面で不利)
- 高深度では二酸化炭素過剰によるナルコーシスに係わる
- 「無意識」はコントロールできない
ダイビングは基本的に自己責任で行うスポーツでありアクティビティです。
一人一人が自身の行動についてよく考えて安全を守る必要があります。
よく考えて、よく楽しむ。そんなダイビングを心がけましょう。