この記事の目次
はじめに
皆さんは各スポーツやアクティビティに特有の病気や症状があることをご存じですか?
ボクシングのパンチドランカーやテニスのテニス肘、自転車やマラソンなどの長距離競技におけるハンガーノックなど。
そのスポーツをやっていれば知っているだろうとは思いますが、特に関心がなければ何それ?てなるものがありますよね。
ダイビングにもその特有のものがあります。
それが学科講習で勉強する「肺の過膨張障害」や「減圧症」ですね。
気体の膨張、過飽和によって引き起こされるもので、現役ダイバーはさておきこれからダイビングをしようとしている方も聞いたことあるかと思います。
それではここで質問、あなたは「ダイバーズマウスシンドローム」をご存じですか?
今(に始まったことではありませんが)この症状で、あなたの歯が危ないのです…。
今回はそんな意識していない方も多いこのダイバーズマウスシンドロームについて触れていきます。
ダイバーズマウスシンドロームとは?
「ダイバーズマウスシンドローム」とはダイビングが原因となって発症、または悪化する顎口腔周囲の疾患の総称。
仰々しく「ダイバーズマウスシンドローム」と言ってみましたが、実は皆さんも少しは知っているんです。
スクイズやリバースブロックで起こる歯の痛みですね。
これはダイビング中の水圧の変化に応じて、歯と詰め物の隙間の空気が収縮・膨張をして痛みや不快感の原因となります。
また詰め物(充填物)が取れてしまったり、破損することも。
これはスクイズ・リバースブロックのことを勉強する時に出てくる有名な例です。
それでは他の症状についてはどうでしょうか?
顎口腔周囲の疾患の「総称」と言うからには複数の症状があるのです。
水圧の変化・マウスピース・乾燥空気の3項目に分けて説明していきます。
1水圧の変化
水圧の変化によって起こる症状は先ほど記述した通りです。
症状
- スクイズ・リバースブロック
- 詰め物(充填物)の破損
対策
症状が出る場合は歯科医に再度受診することをお勧めします。
しかし医師に「スクイズ」で痛いと言っても通じない場合もありますので、その場合「気圧性歯痛」と言い方を変えてみましょう。
潜降時に症状が出る場合は少し浮上し痛みが治まってからゆっくり潜降、リバースブロックの場合は逆です。
少し潜降し、治まってからゆっくり浮上しましょう。
リバースブロックの際に注意しないといけないのは残圧です。
残圧がなくリバースブロックへの対応が出来ない場合、否応なしに浮上しないといけません。
普段からエアマネジメントをしっかり行いましょう。
2マウスピース
マウスピースの噛みすぎによって起こる症状も多いです。
噛みすぎの原因は緊張やストレスであったり不安感から来るものであったりとダイバーによって様々です。
意外と咥え方を知らないと言う方もおられるみたいです。
「あ」の口で開いてマウスピースを口の中へ→「い」の口で軽く噛みます→「う」で口をすぼめます→完成です。
症状
- 顎関節症
- 歯周病の悪化
- 詰め物・入れ歯の欠損
- 酸欠の誘発
などがあります。
マウスピースを持続的に強く噛みしめることによって顎周りの骨(関節)や筋肉に負荷が掛かり顎関節症の発症、悪化に至ります。
同様に歯および歯茎にダメージが加わり歯周病を悪化・詰め物や入ればを欠損させる原因になります。
酸欠については実際にやってみたらよく分かります。
口を開いて大きく深呼吸をした後に、今度は歯を食いしばって深呼吸をして見てください。
かなりの呼吸抵抗を感じるはずです。
この抵抗によってガス交換の妨げが起き、酸欠や息苦しさに繋がります。
余談ですがダイビング中の呼吸については別記事で紹介しています。
マウスピース起因のものについてはストレスや不安感の解消などが根本的に必要ですが人によって様々なのでここではなんとも言えません。
ただマウスピースが口から外れる不安感を取り除きたいのであれば
対策
- マウスピースのプラットフォーム(歯で噛む場所)の大きいものを使用する。
- カスタムメイドのマウスピースを使用する。
といった対策を講じることが出来ます。
特にカスタムメイドのマウスピースは自分の歯の形に合わせて作れるので楽に保持出来るようになるので安心感が増します。
こういったマウスピースを自分で買うことも出来ます。
セカンドステージとの繋ぎに刺してインシュロックで縛るだけです。
サイズや接続に不安がある方は最寄りのダイビングショップに相談して見ましょう。
その場合はショップで購入することを推奨します。
サービスの対価はお金です。
3乾燥空気
ダイビングで使用するシリンダー内の湿度は3%程度であり非常に乾燥しています。
この乾燥した空気を吸うことによって起こる症状です。
症状
- ドライマウス
- 悪心・悪感
ドライマウスとは唾液の分泌量が少なくなり口の中が乾いた状態になることです。
症状として
- 口が乾く
- 舌が荒れる
- 唾液が出ない
- 味覚が弱くなる
などがあげられます。
ダイビングをしている方が必ずなると言うわけではないですが、乾燥した空気を吸うと言う環境的になり易いものではあると言えます。
また元々ドライマウスの症状がある方は症状が悪化する可能性もあります。
悪心・悪感は口の中が乾燥することにより不快感をはらんだり、吐き気を感じたりする症状のことです。
ダイビング中に唾を飲もうとして「うぇっ」となった方もおられるのではないでしょうか?
ダイビング中の吐き気や嘔吐はパニックになる可能性も有り、2次トラブルを誘発します。
対策
- 潜降前に水分補給をする
- 飴を舐めながら潜る
- 空気の吸い方を変える
- バイオフィルターを装着する
潜降前の水分補給はドライマウスへの対策だけでなく、熱中症やダイビング中のこむら返りの抑止にも効果的です。
注意として潜る直前に飲んでも身体には吸収されないので出来るだけ潜降30分前ぐらいから意識して取るようにしましょう。
直前の水分補給は口の中を潤す分には効果があります。
飴を舐めることによって唾液の分泌を促進して口内の乾きを抑えます。
しかし誤飲により喉を詰まらせる可能性もあるのであまりオススメはしません。
マウスピースを噛みながら飴を舐められない人もいます。
効果としては十分ありますが、体内の乾燥を防げている訳ではないです。
意識してエアの吸い方を変えるのも効果があります。
舌を上あごにくっつけてエアをゆっくり吸うようにします。
これにより乾燥した空気が直接のどに当たらないので、喉の乾燥による悪心を防ぐことが出来ます
最後にバイオフィルターの装着です。
これはバイオフィルターと呼ばれる水分を噴霧するものでレギュレーターホース内の湿度を60%~70%に保ちます。
効果はあるのですが
- 取り付けの手間が掛かる
- ダイビングの都度真水の給水が必要
- レンタル器材だとその器材を占有してしまう
- 値段かそれなり
といったデメリットも。
購入・装着はなるべくダイビングショップと相談しながら行いましょう。
また唾液の分泌量の低下により口内のばい菌が洗い流されなかったりして口の中が不衛生になります。
日頃からマウスウォッシュやマウススプレーなどを使ってオーラルケアをしておくこともドライマウスの対策になります。
マウスウォッシュには吐き出した後にシンクに汚れが付着してしまうものもあるので、ダイビング後にはマウススプレーを使用することをオススメします。
終わりに
今回紹介した「ダイバーズマウスシンドローム」、これも減圧症などと一緒で私生活にも影響するものです。
悪心などによってパニックになると溺水や急浮上からの減圧症・肺の過膨張障害を引き起こすことがあるので注意が必要になります。
そして特に口内環境のケア、綺麗な歯を保つことは人生に於いて大事なものです。
日頃からオーラルケアを行い清潔に保ちましょう!
人生100年時代です。
それでは!